SSS Re\arise クリエイティブディレクター:米山舞 × UIデザイナー:ZIII 対談

「Re\arise」のディレクター米山舞氏と、タイキ氏・NAJI柳田氏の初のイラスト本デザインを手がけたアプリボットのUIデザイナーZIII氏。2冊の本を通じて2人が感じたことや、これからのものづくりへの考え方を伺った。

左:casket 中央:Elevation 右:SSSアートブック

ー タイキさんとNAJIさんのイラスト本ができあがったときに感じたことを教えてください。

米山 まずクオリティがとても高いなって。ZIIIさんがイラストレーターの特徴をしっかり把握してオーダーに答えているところが、作家ファーストのデザイナーさんだということがすごく伝わってきました。作家の要望に答えつつも、ZIIIさんのデザインでイラストの素敵なところをみせているところがバランスがいいなあって思います。

ー タイキさんとNAJIさんからも同じご意見をいただきました(笑)作家ファーストの考え方が、ZIIIさんを指名する理由でしょうか?

米山 その通りですね!SSSでデザインをお願いしたいって状況になると、必ずZIIIさんが第1希望に上がるんですよ。イラストレーターの人柄とか、こだわっているところを理解したうえでデザインに起こしてくださるから安心して仕事をお任せできます。

ー ZIIIさんは普段アプリボット内のゲームプロジェクトのUIチームリーダーをやっていますが、SSSのデザインの仕事をするときはどうやってスケジュールを切り分けているのでしょうか?

ZIII まず納期を聞いて、逆算してスケジュールを引いていきます。この日にSSSの作業をしたいと思ったら、それ以外の仕事は他の日に詰め込みます(笑)ゲーム制作とは違ってとりまとめの部分になるので、イラストがなくてもできるところから作業を始めて、イラストが完成したら流し込めるように作業していますね。

米山 そのホスピタリティが作家にとってありがたいです(笑)この人はイラスト作業に集中したいだろうなとか、こういう素材はあとで来るだろうなとか、デザイン以外の部分で読む力があるところが本当にすごいと思っています。

ZIII ゲーム制作では素材がなくてもデザインは進めなければならない場面が多々あるので、決まりきっていない状況のなか作業を進めることには慣れていますね。

米山 これまでのゲーム制作の経験が生きてきているのですね。

ZIII 今回だと、タイキさんが表紙のイラストにかなり力を入れていたので、完成を待っている間に周りの装飾は先に作っていました。ラフでは別の花だったのですが、完成品が上がってきたらユリの花になっていたので、そのタイミングで装飾は全てユリに合わせてデザインを変えました。

米山 対応力すごい(笑)

ー この2冊の本の制作はどのくらいかかったのでしょうか?

ZIII 合わせてだいたい2ヶ月ですね。最初に声をかけてもらったのが今年の1月で、3月末くらいには入稿していました。

ー 2冊を2ヶ月で制作したのですね!すごいです!そのあいだは他の業務もあったと思いますが、大変ではなかったでしょうか?

ZIII 普段の制作のデザインとは全く別のデザインなので、息抜きのような気持ちで取り組んでいました。今年は自分の作家としての制作も頑張りたかったので、そのうちのひとつとして制作をしました。

作家からの要望に応えるためにZIII氏がやっていること

casket裏表紙

米山 タイキさんの表紙の図案は完全に1からですか?

ZIII 1からです。最初に手描きのラフを2案送って、タイキさんに選んでもらいました。

米山 ラフは必ず2案出すのですか?

ZIII 最低2案は出しています。欲を言えばもっと出したいですが(笑)デザインが全く違う2案を出して、どちらがいいか聞いてみます。どちらもダメなときは作家からの意見がもらえるので、その意見を踏まえた上でもう一度デザイン案を出します。

米山 ZIIIさんは仕事の進め方が上手だなと思っています。意見を引き出すことがうまいというか。近くで私たちSSSをみてくれているので、信頼できるんですよね。みんな当たり前だと思っているのですが、たぶんデザイン以外の部分も強いんじゃないかと思っています。

ー ZIIIさんは必ず作家さんの要望の1段上の提案をしてくださいますよね。

米山 そうですね。例えばタイキさんの本でいうと、タイキさん本人の中にもコンセプトがありましたが、それをさらに昇華したのはZIIIさんでしたね。表紙の装飾が本当に綺麗で、タイキさんの絵にぴったりです。

ZIII 米山さんとタイキさんが初めにすり合わせた言葉があったので、そこに合わせて装飾を考えました。

米山 「棺」「白」「エレガンス」「モダニズム」とかですね。

ZIII 白だから装飾を盛ってもバランス悪くならないだろうと(笑)

ー 盛った装飾がタイキさんのイラストの繊細さとうまく融合していますよね

米山 これは本当に手に取った人にしかわからない!

ZIII この部分は本当にぜひ手に取って見てほしいです

米山 本を手に取る人のことをすごく考えているなと感じました。なにか意識していることはあるんですか?

ZIII まず第1に、自分がSSSのファンだからということが大きいです(笑)あとは自分のなかで、本棚には気に入ったデザインの本を並べたいという気持ちがあって。そこに置けるようなデザインにしようという考え方があります。

米山 私たちも同じ考え方ですね。

ー デザイナーはクライアントの要望をまず叶えようとしますが、ZIIIさんは必ず手に取る人のことを考えていますよね。

米山 作家に寄り添いつつ、デザインを押し進めてくださいますね。遠慮があるとお互い制作を進めづらくなるのですが、ZIIIさんは作家の要望とお客さんの視点、デザイナー自身の考え方、その感覚のバランスがちょうどいいです。お医者さんみたいですよね(笑)どういう風に痛いんですか?じゃあこうしましょうね、みたいな。その聞き方がすごく仕事の進め方が上手い人だなと感じています。

ZIII 個人的に、デザインはみんなが作りたいものを叶えるものだと考えています。だからまず相手のやりたいことを引き出すことが大切ですし、何度もスクラップ&ビルドを繰り返していきます。自分だけでは良いデザインは生まれないと思っています。

ー デザイナーとして大切なことは何でしょうか?

米山 知識でしょうか。ZIIIさんもそうですけど、知っているデザイナーさんはみなさん勉強をよくしているなって思います。だから説明をしなくてもいいというか。知識があるからイラストレーターと話せるし、イラストレーターが知らないことも引き出してもらえます。

ー デザイナーは持っているリファレンスの量で仕事の質が変わるといいますよね。

ZIII そうですね!自分からアイディアが出てくるひともいますが、それは本当に一握りで、アイディアはいいものをたくさん見ないと出ないと思っています。どういうものがあるのか知っているかが大事ですね。

米山 ZIIIさんはその知識で会話をしてくださるので、それも一つの才能だなと思っています。そのうえで、このイラストレーターさんはこういうことがしたいんだなっていうのを引き出してくださるのでありがたいですね。

SSSアートブックの制作について

SSSアートブック

ー このSSSのアートブックが、ZIIIさんとSSSで出した最初の本ですよね

米山 これが最初ですね。104ページあります。

ZIII これすごくがんばりました(笑)

米山 最初にあった要望は「年表」と、SSSのイメージカラーの「黒」だけで、コンセプトというはっきりしたものはまだありませんでした。でも、特に要望は出してなかったのにZIIIさんは公式サイトのデザインを踏襲したものを提案してくださったんです。

ZIII これは絶対デザイン合わせた方がいいと思って(笑)

米山 その提案がすごく合っていて、提案いただいたときはびっくりしました(笑)トンマナを合わせるのがすごくお上手なんですよね。

ZIII これに関してはトンマナは守ろうと思ったんですよね。SSSで出す初めての本なので、新しいコンセプトを生み出してしまうとSSSとしてのパッケージングが弱くなってしまうなと思ったんです。だから、そのときに出ていた公式サイトのデザインに合わせてアートブックもデザインしようと考えました。

米山 要望に対してやりたいことを引き出してくださる力が、やっぱりすごく強いですよね。しかも、このときも全部ページを印刷して本にして見本を持ってきてくださったんです。SSSメンバー全員ビビり倒しました(笑)

ZIII やっぱりイメージがあった方が伝わりやすいかなと思って、本にして持っていきました。本になった時に感じるリズムとかもあるので、その部分を確認して欲しかったんです。

米山 形になっているとみんなも反応しやすいから助かりますね。SSSメンバーの性格を読まれている感じがします(笑)

ZIII もともと「セブンスコード」で一緒にゲームを作っていたので、SSSの方たちの作品に対するスタンスを知っていたからもあります。作品に対して限界まで粘りたいとか。

米山 嫌いにならないですか?(笑)

ZIII ファンなので全くならないです(笑)SSSのメンバーと話していると私にとってすごく刺激になるので嬉しいですね。

米山 普通の仕事だとデザインのデータだけあげればそれで要件は満たすはずなんですよ。でもZIIIさんはそこだけに止まらず、渡された側がどう受け取るかまで考えて続けているんです。その部分を越えられるか越えられないかで仕事の結果って大きく変わってくると思います。

ZIII 仕事を任せてもらった以上は期待以上の結果を出したいなという思いがあるんです。たぶん、期待して仕事を任せてもらっていると思うので、良い結果を残せるよう常に最善を考えていますね。あとはSSSのメンバーが忙しいことを知っているので、自分から意見をとりにいけるようにしています。

米山 本当にありがたいですよね。あたりまえだと思われがちだけど、本当にホスピタリティが高いです。

ー ZIIIさんがクリエイターとして仕事を受ける際に大切にしていることはありますか?

ZIII クリエイター人生でプラスになるかは意識しています。ゲーム開発は1つのプロジェクトに数年いることが多く、その数年はデザインの幅がそのプロジェクトだけになってしまうことがあります。だから、デザインの幅が狭くならないようにいろいろなクリエイティブ制作に挑戦しようと常に考えています。

米山 デザインのなかでも、本は特にデザインの経験値が上がりますよね。

ZIII そうですね。SSSのメンバーはものづくりに対してのこだわりや熱量が本当に高いので、一緒に仕事をしていると、自分だけでは生み出せなかったなと感じるものが多いです。本当に良い経験をさせてもらっています。

ー 米山さんが今後ZIIIさんと作っていきたいものはありますか?

米山 ファッションや化粧品などのおしゃれなイラスト本とかを作りたいです。ZIIIさんとは好きなファッションブランドが一緒なので、グッズなどの物への感覚が一緒だなと思っています。なんなら展示会に一緒に出展してほしいです。

ZIII ぜひ挑戦してみたいです。

ー ひとつのファッションブランドを作ってしまいそうですね

米山 イラストレーターとデザイナーの垣根を越えたいという思いがあって。あまり同じ趣味の方と出会うことがないので、同じ感性でなにか作りたいですね。早速ですが夏コミやりますか?

ZIII ほんとですか(笑)やります!

米山 あと絵の額装もやってほしいです。額装は本当に大事なので!

ZIII ぜひ!大学で日本画をやっていたときは自分で額を作っていました。だから額装の大切さはよくわかります。絵にお化粧する感覚に近いですよね。

米山 そうそう!ZIIIさんはものづくりの経験が豊富だからアイデアがたくさん出てきて話していると困らないですね。今度デザインの作戦会議しましょう(笑)

ー お二人が組むとイラストとデザインの新しい価値観が近い未来に生まれてきそうで、本当に楽しみです

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(2022年7月31日まで)

取材/文=中田 百香

写真=高橋 優志


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