SSS:NAJI柳田 × UIデザイナー:ZIII 対談

「Re\arise」で初のイラスト本を制作したNAJI柳田氏と、イラスト本のデザインを手がけたアプリボットのUIデザイナーZIII氏。SSSから信頼されるデザイナーZIII氏の仕事ぶりについて伺った。

Elevation

ー 今回のイラスト本のテーマを教えてください

NAJI Elevationです。初めてのイラスト本なので、自己紹介っぽく、僕がどういう人間なのかまだ知らない人にも伝わるように作りました。普段はTwitterで活動しているので、いままでTwtterに載せていた絵を中心にまとめています。Elevationにはステップアップというテーマを含んでいるのですが、単純に絵のクオリティアップというよりは、自分が絵を描く理由を一段あげたいという意味があります。

ー 「絵を描く理由を一段上げる」というのは具体的にどういったことでしょうか?

NAJI 僕はこれまで比較的情報量が多く、ぱっと見て上手いということが伝わりやすい絵を描いてきました。自分の主張というのは意識してなくて、仕事に合わせてやりますよという感じだったんです。だから、今回のSSS展示会「Re/arise」の企画を聞いて、自分は参加する理由がないなと思ったんですよね。展示会って表現したいコンセプトや見せたい印象ありきだと思っているので。、結果的にはRe/ariseの意義を聞いて、参加する事を決めたんですが、その為にまず「自分の実感を自覚する」というラインを超える必要がありました。だから、今回の本のテーマは、これまでのやり方を捨てて視点を上の階に移す事で、階層がある事自体を自覚するという意味があります。

ー イラスト本のデザインはどういった流れで決まっていったのでしょうか?

ZIII まずNAJIさんに今回のイラスト本のテーマや思いを聞かせてもらいました。四角に区切られたイメージにしたいということや、作品をひとつ上に持ち上げたいという思いがあったので、箱感をベースにしながらデザインを提案しました。

ー 縦に開く構成はZIIIさんからの提案ですか?

ZIII 実は、はじめは表紙のイラストは縦長ではなかったんです。どうやってイラストを入れようか相談していたら、米山さん(「Re/arise」クリエイティブディレクター:米山舞)からイラストを縦に描き足す提案をもらったので、それを生かす形にデザインを作っていきました。

NAJI この部分は何度か話し合って決めていきました。

ー NAJIさんはなぜZIIIさんに依頼しようと思ったのですか?

ZIII レスが早いから?(笑)

ー デザイナーはレスの早さ本当に大事ですからね(笑)

NAJI それもプラス要素としては確実にあります(笑)でも、それ以上にZIIIさんは要求に対してデザインを考えてくださるという部分がすごく上手だなと思っているんです。有名なデザイナーさんでも、人によってはその人らしさがわかりやすい方が結構いて。そのコンセプトが僕の考え方とあっていればそれでもいいのですが、僕は今回ブロック感を大切にしたいと思っていたので、その部分を上手に引き出してくださるZIIIさんにデザインを依頼しました。ZIIIさんがその部分が上手いのは、やっぱり会社でデザイナーをやっているからかなと思っています。

ZIII 確かに、今回のデザインにあまり自分らしさは出していないですね。自分らしさを出す時は出しますが、このイラスト本の主役はNAJIさんの絵なので、NAJIさんの作品集として美しくまとめたい気持ちが大前提でした。

NAJI ZIIIさんのなかで、このデザインだったらこういう感じがいいかな?という考えはありますよね。

ZIII そうですね。今回だと四角という硬質なイメージだったので、遊びのある線はまず違うなと思っていました。NAJIさんから話を聞いたあと、とにかくたくさんリファレンスを集めてNAJIさんとイメージを固めました。

NAJI 僕もリファレンスを集めていたのですが、お互いが集めてきたリファレンスがほぼ同じでした。

ー ZIIIさんはSSSの作家さんが好きなものをよく理解している感じがしますよね。それはSSSが好きだからでしょうか?

ZIII 単純にSSSが好きっていう部分はありますね。でも多分、私が普段ゲームのUIデザインを作っているからという部分も大きく関わってきていると思います。

ー というと?

ZIII ゲームのデザインはそれぞれのタイトルにあったクオリティの出し方があります。例えば、3Dのハイエンドグラフィックのゲームであれば、その3Dの美しさを邪魔しないようなデザインがいいですし、逆に絵がシンプルなタイトルであれば、UIがしっかり目立つようなデザインにした方がいいこともあります。タイトルのテーマによってはクオリティの高さの基準も変わってくるので、かなり多角的にアイデアの引き出しを要求される職種だと思っています。

ー なるほど。状況によってアイデアを出す高さや目線を柔軟に変えているのですね。それは確かに会社のプロジェクトによって大きく変わりますよね。タイキさんの本とNAJIさんの本では全く雰囲気が異なっていますが、例えばこの表紙の階段風のロゴはNAJIさんからのオーダーですか?

ZIII 私からですね。はじめにNAJIさんから「ブロック」や「シンプル」といったキーワードをもらっていたので、そこに合わせて真っ直ぐのロゴや、斜め線を入れたロゴなど、何種類かデザインを提案しました。でも斜め線は違うなというフィードバックをNAJIさんからもらって。今回はテーマが「Elevation」なので、文字が階段状に並んでいるのがいいなというところから始まり、ただ文字が階段状に並んでいるだけではあまりおもしろくないので、遊びを入れて最終的にこのロゴが生まれました。

NAJI ZIIIさんはデザインを合わせてくださるので、僕自身がぶれていてはいけないなと思い、終始四角くしてほしいというオーダーを貫きました。それ以外はもうほぼお任せしていました。

ZIII そういった点ではすごくデザインを提案しやすかったですね。

ー 今回の本では全て四角で仕切られていて、イラストも階段状で並べられて見やすいなと感じました。イラストの配置や順番はどうやって決めたのですか?

ZIII タイキさんのときと同じで、一旦私の方で全て並べて、NAJIさんに確認してもらっていました。絵のジャンルに合わせてカテゴリ分けをしたいと話していたので、カテゴリ分けは四角でトランジションを作った方がいいんじゃないかという提案をしました。

ZIII キャラクターが並んでいるページの元素材は、受け取った時点ではバラバラのサイズのPSDでした。ページに並べた時に均等で整理された印象になるよう、ブロックで分けた背景の上に並べ直しています。テーマで統一されているからこその美しさやかっこよさがあるので、この本でもその統一感がぶれないようにデザインしています。

ー 「Elevation_dragonizm」のページはイラストが繰り返されているレイアウトが斬新でおもしろいです。このレイアウトはどちらが考えたのでしょうか?

ZIII これはNAJIさんからですね。イラストの上下幅が絶妙に足りなくてNAJIさんに相談した時に、繰り返してみるのはどうだろうとアイデアをもらいました。マスキングテープみたいでおもしろいですよね。

NAJI 展示会の作品を制作していく過程で、ブロックをずらしても絵っぽくみえていたので、じゃあずらしても変な切れ方にはならないなと。

ZIII 「Elevation_Re/arise」はフィルムっぽいイメージのほうが合いそうだったので、上下に黒を足すレイアウトにさせてもらいました。

ー 良い塩梅に切られて馴染んでいるので、ついページを捲りたくなりますね。四角で区切られたデザインは単調になりがちですが、毎ページレイアウトが変わっているので見ていて飽きないです。

ZIII 後半は四角い絵が多いので単調にならないよう、レイアウトには気を遣っていました。今回の展示会用に描き下ろされた絵は大きく見せたいという話があったので、前半はページをぶち抜くようなレイアウトにしています。

ー お二人がこの本を作るときに1番こだわったポイントはどこでしょうか?

NAJI 本のデザインにこだわるのはZIIIさんにやってもらいたかったので、僕は守りたい部分を貫くということに徹底してこだわりました。ZIIIさんにやりたいことを伝えるときは迷わせないように余計なことは言わないようにしていました。

ZIII NAJIさんにはかなりデザインを任せてもらっていたので、こだわったとポイントで言えば全部になりますね(笑)あえていうなら、読んだ時に気持ちよくなるようなリズムになるようにレイアウトしたので、全体感を見てもらうと楽しめるかなと思います。

NAJI 全体のリズム感で言うと、カテゴリ分けの区切りのページは黒と白の2種類提案をもらっていましたね。

ZIII そうですね。基本のページを白ベースで作っていたので、カテゴリ分けの部分は黒でがっつり印象を変えて区切りをわかりやすくしました。

ー たしかに、この印象の変え方は実際に手にとって捲ってみないとわからないですね。

ー 最後に、ZIIIさんと今後やりたいことがあれば教えてください

NAJI ゲームを作ることに興味があるので、ゲームを作るときはぜひZIIIさんにデザインをお願いしたいです。

ZIII ぜひやりたいですね!

ー SSS×ZIIIのゲームプロジェクト第2弾ですか

ZIII セブンスコードをデザインしたときは、自分のクリエイター人生にとってターニングポイントだったのでまた挑戦したいです。

ー あのときからさらに経験を積んでステップアップしたSSSとZIIIさんのゲームプロジェクト、実現する日を楽しみにしています

SSS PRODUCT SHOP

(2022年7月31日まで)



取材/文=中田 百香

写真=高橋 優志


関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。