SSS:タイキ × UIデザイナー:ZIII 対談

「Re\arise」で初のイラスト本を制作したタイキ氏と、イラスト本のデザインを手がけたアプリボットのUIデザイナーZIII氏。SSSから信頼されるデザイナーZIII氏の仕事ぶりについて伺った。

casket

ー 今回のイラスト本のテーマを教えてください

タイキ 「CASKET」、棺という意味です。

ー なぜ「CASKET」なのでしょうか

タイキ 実はこのイラスト本の制作が決まった時、今回のSSS展示会「Re/arise」のディレクターである米山さんに、初めてのイラスト本だから15年前の過去の絵も入れるように言われたんです。本当はどうしても入れたくなくて(笑)過去の絵を弔うという意味で「CASKET」になりました。

ZIII 過去の絵はすごく小さく入れて欲しいと言われました。だからその通りにしたら、米山さんに「これは小さすぎるから大きくしろ」って言われて(笑)

タイキ 本当に嫌で、ハードディスクに穴を開けようと思いました(笑)

(一同爆笑)

ー タイキさんからZIIIさんへは、どういった形で依頼をしたのでしょうか?

タイキ ZIIIさんへは「CASKET(棺)」「モダナイズ」「エレガント」といったキーワードをお伝えして、それをベースにZIIIさんのほうで自由にデザインしていただきました。

ZIII タイトルにどういった思いが込められているのか、色はどういうイメージがいいのかを聞いて、デザインに落とし込んでいきました。

ー ZIIIさんからタイキさんへデザインを提案した形になるのですね

ZIII 依頼をもらった時点で、表紙の左右に空押し加工(エンボス)をすることは決まっていました。なので、最初にフレームの案を2案タイキさんに提案しました。今回は「CASKET」がテーマだったので、より棺らしさのある案に決定しました。タイキさんとイメージをすり合わせながらデザインを進めていった感じですね。

表紙を開いたあとも同じ画角で同じ絵があることも決まっていたので、棺を開くようなイメージになるようにもしてあります。

ー 表紙のデザインが決まったあとはどういった流れでデザインを進めていったのですか?

ZIII 一旦もらった素材をすべて当てはめてからタイキさんに提案し、デザインをすり合わせていきました。例えば「宝石」というワードをもらっていたので、六角形にイラストを切り抜いたサムネイルがいいのではないかという提案をしました。タイキさんに見てもらったときに、もう少しシンプルなすっきりしたデザインがいいというフィードバックをもらったので、2校目ではそのフィードバックを反映したものを確認してもらいました。

ー お互いに最終イメージをすり合わせていく流れですね。ちなみに、「宝石」というキーワードはどこから生まれたのでしょうか?

タイキ 今回のイラスト本のテーマである「CASKET」は英語だと「棺」という意味なのですが、イギリスの方では「大切なものを保管する箱」という意味があります。「棺」だけだと少し陰惨なイメージがあるので、「大切なものを保管する箱」ということから「宝石」を連想してキーワードとして取り入れました。

ー なるほど。ZIIIさんは、それらのキーワードからどうやってデザインイメージを固めていったのでしょうか?

ZIII まずもらったキーワードに対してリファレンスをたくさん集めて、その中からイメージに合うものを絞りつつ、デザインのイメージを固めていきました。今回は白い表紙にエンボスで加工をするから綺麗なイメージなんだろうな、そうすると内側はシンプルな方がいいんだろうなとか。表紙の加工に合わせて内側に装飾を足すと関連性が取れるかなということも考えたりしていました。タイキさんの絵は女の子なので、それを彩るものがシンプルなものは違うなと思って複雑な形状の装飾にしました。

ー この時点でタイキさんの絵は仕上がっていたのですか?

ZIII ラフの状態でした。色はまだわからなかったのですが、花があることはわかっていたし、テーマが「棺」だったので、棺に花を添えるという意味でも装飾のテーマは花がふさわしいと思い、その流れでラフを作成しました。タイキさんの本なので、タイキさんのやりたいことに合ったものがいいと思いながらデザインを考えています。

タイキ ZIIIさんには結構デザインのアイデアを提案してもらっています。例えば、空押しに細かい縦線を入れて花を浮き上がらせた方がいいとか。自分が思っている以上の提案をしてくださるので、本当に助かっています。

ー ZIIIさんがタイキさんの依頼に対して的確かつそれ以上の提案をしているのは、どういった秘訣があるのでしょうか?

ZIII デザインを始める前に、必ずしっかり話す時間をもらうようにしています。あとは、ものができないとお互いイメージを固めづらいので、まずは一旦形にして自分の意見をまとめます。そこからタイキさんと一緒に、やりたいこととすり合わせていきます。

ー タイキさんはこのZIIIさんのやり方を通して感じたことはありますか?

タイキ 実はそんなにたくさん時間を使って話したわけではなく、ZIIIさんは短い時間でやりたいことだけを的確に聞き出してくれました。僕はZIIIさんに提案いただいたものが良いかどうか判断するだけだったので、やりやすかったですね。ZIIIさんがいろいろな理屈に基づいて提案してくださるので、説得力があって「良い」という評価しかなかったです。

ー ZIIIさんはどうやって「説得」をしているのでしょうか?

ZIII そもそも、私自身がSSSのファンなので、私が見たいものを作ろうという考え方が根底にあります。私が手にとって嬉しいものなら、他のファンの方も嬉しいんじゃないかって。タイキさんの要望を聞きつつ、どうやったらタイキさんの絵がより引き立つのかを第一に考えながらデザインしています。これはタイキさんの本であって、デザインが主役ではないので、そこは重要ですね。とにかくいいものを作ろうという気持ちでした。

ー イラスト本を手にとった方に1番見て欲しいポイントを教えてください

タイキ とにかく喪に服してくださいとしか…(笑)

ー (笑)

タイキ 今回の新作は展示会ベースで作っているので、本に入れても映えるようにという部分をZIIIさんに頑張ってデザインしてもらいました。

ー 絵の順番にもこだわりはあるのでしょうか?

ZIII 順番はタイキさんから指定をもらっていました。ですが、今回は白い絵がいくつかあるので、見ていて同じ色が並ばないように調整しています。表紙の白い絵(casket01)のあとは赤い絵(redveil)を持ってきて、鮮やかな色彩が目に入りやすいように工夫しています。あとは、全天球イラストの「海中遊泳」を見開きで見せるというのは1つ前のSSSの本でやっていたので、あえて球体のまま載せて見せ方を変えています。

ー 左ページの絵を拡大しているページは見ていて気持ちいいなと思ったのですが、なにか工夫をしているのでしょうか?

ZIII 頭のサイズが同じになるようにしています。そうすることで、パラパラとめくった時にすっきり見えるようになっています。全ページできたら印刷して1回組んでみて、なんか違うなと思ったら組み替えてみて…という作業を繰り返していました。こういった視線誘導の考え方はゲームUIではよくやることなので、その経験が生かされているかなと思っています。

ー casket01の右ページの切り抜き部分はお二人のどちらが選んだのでしょうか?

タイキ ここはZIIIさんですね。僕が選ぶよりはお任せした方が良いかなと思って。

ZIII そうですね、ここは私が好きだなと思った部分を選びました。ここでいいですか?ってタイキさんに確認して、いいですよ、となったのでそのまま好きな部分を使っています。

ー 普段デザインをする中で、発想の元になっているものなどはありますか?

ZIII ファッションのブランディングが好きで参考にすることがあります。ファッションブランドは色や記号の使い方が上手で、この色の使い方だったらこのブランドという印象付けがすごくわかりやすいんです。なおかつ、そのデザインに至った理由っていうのがどのブランドも明示されているので、デザインをロジカルに考えるときにその考え方はとても参考になるなと思っています。

ー 好きなデザインはありますか?

ZIII もともと大学では日本画を描いていたので、細かい装飾が入ったデザインが好きです。グスタフ・クリムトとかミュシャ、琳派など、みんなが見て「わかりやすく美しい」と思うものが好きですね。そういった点でも、タイキさんの絵は全部美しくて、本のデザインをするときはすごく楽しかったです。

ー タイキさんは今回「美しさ」を意識していたのでしょうか?

タイキ していたのかもしれないですね。実は、自分が本当に好きなものを探している途中で、今回の「美しさ」はそれを探る一環でした。作家として走り始めたばかりだと思っているので、そういった実験はまずしなきゃいけないと思っています。

ー ZIIIさんが今後SSSとやりたいことがあれば教えてください

ZIII 本もゲーム(セブンスコード)もいろいろ作らせてもらったので、今後もなんでもやりたいですね(笑)やっぱりSSSのメンバーはクリエイティブの第一線で活躍されているかたばかりなので、本当に刺激になります。会社でものづくりをするといろいろな事情でどうしても妥協をしなければいけない瞬間とかがあって。でもSSSのメンバーは自分のやりたいことを最後まで貫いて、こだわってものづくりをするので、新鮮な気持ちで一緒に仕事をすることができます。だから、やりたいことというよりは、一緒に活動ができたら嬉しいなと思っています。

ー SSSと、その魅力を引き出せるZIIIさんの活躍は「未知の価値」を生み出せそうで本当に楽しみです

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(2022年7月31日まで)

取材/文=中田 百香

写真=高橋 優志


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